東京ヴァルハラ異聞録

「ガキが……下に降りな!!地上でぶち殺してやるよ!」


「上等だ!!墓場くらい選ばせてやるよ!!」


俺と名鳥を置き去りにして、二人はビルから飛び降りてしまった。


「やれやれ……向こうが戦うって事は、あぶれた俺達でやるかい?見たところ、キミは俺がお目当てではなかったみたいだけど」


二人に呆れた様子で、その長身で細身の男は俺に尋ねた。


明確な敵意は感じない。


黒井のような闘気も何も感じない。


そこにいるのが当たり前のような、自然体の男に、俺は武者震いを抑えられなかった。


「いえ……名鳥順一。あんたも俺が超えなきゃならない壁です。戦う為に来たんですよ。戦ってください」


「ま、そうだよね。今も昔も変わらないね。形は変わっても、この街では戦う事が全てなんだよな。強くなければ、存在を否定された気さえする。結城昴、俺は本当は戦いたくなんてないんだよ。わかるかい?」


ひょうひょうとしているようで、この人には芯がある。


戦いたくないと言っていても、戦う理由はわかっている。


そんな覚悟がある男の目だ。


「守りたいものがある。叶えたい願いがある。理由は何だって良いです。戦わなければ強くなれない。強くなければ何も守れないし願いなんて叶わないですから」