東京ヴァルハラ異聞録

イライラしている梨奈さん。


そして、不安そうにソワソワしている悟さん。


俺と美佳さんは、そんな二人を見て、徐々に不安になっていた。


「す、昴くん。黒部さんって、結構強かったよね?それなのにあんなに怯えてるって……ヤバくない?」


「お、俺に言われても……どんな人が来るか、俺も気になってるんですから」


人が行き交う姿がまばらに見える交差点。


その方をぼんやりと見ていると……その中に一人、明らかに異質なオーラというか、殺気を纏った男がこちらに向かって歩いて来ていたのだ。


パーカーにキャップ、アンダーウェアにハーフパンツというラフな格好。


だけど、その目は優しげで……そのアンバランスさが異様さを強調していた。


「あ、タ、タケさん!お疲れ様です!」


悟さんが、深々と頭を下げる。


「悟……何なんだよさっきのはよ!」


そう言って、悟さんに近付くと同時に、折れ曲がった身体の腹部に、軽くパンチを入れたのだ。


軽く、じゃれ合っている程度の物だと判断したけど、悟さんは頭を上げなかった。


「す、すみません!」


「で?さっき話したのはどっちの女だ?……って、聞くまでもねぇな」