東京ヴァルハラ異聞録

「よし、じゃあ屋上に行こう」


沙羅にそう言って、日本刀を取り出した俺は、壁に向かって駆け出した。


そのまま、壁に飛び付き、壁面を駆け上がる。


「!?う、嘘でしょ!」


そんな沙羅の声が聞こえたけど、俺の足は止まらない。


だけど、20メートルほど駆け上がったところで、足が壁を蹴る事が出来ずに空転。


「おっと、上りきれなかったか」


いつものように、日本刀を壁に突き刺して、その腹に乗って高く飛び上がった。


屋上に辿り着いた俺は、まだ地上にいる沙羅を見て、手招きをした。


沙羅が驚いた理由は……俺にもわかる。


以前なら、壁面を20メートルも駆け上がる事なんて出来なかった。


身体の使い方や、微妙な力の加減を、高山真治に無理矢理叩き込まれたか。


「……あいつ、どれだけ強かったんだよ。俺と大して歳が変わらないってのにさ」


黒井や秋本、篠田さんとも違う、異質な力。


単純な力だけなら、篠田さん達の方が上だろうけど。


それとは違う、意思の力と言うか……想いの強さを感じた。


苦笑いをしながらそんな事を考えていると……左方向から超高速で何かが迫っている事に気付いた。