東京ヴァルハラ異聞録

秋本は俺達を助けに来たわけじゃない。


偶然……にしてはやけにタイミングが良いけど、そのおかげで俺達は助かったと言える。


「黒井、手助けは必要か?」


今まで静観を決め込んでいた大友が、腰を上げて黒井に声を掛けた。


いくら黒井と言えども、秋本相手ではただでは済まないと考えたのだろう。


だが、それは叶わなかった。


「残念だけど、お前の相手は俺がしてやる。秋本さんの楽しみの邪魔はさせない」


大友の背後で、鎖を巻き付けた拳を突き付け、冷たい視線を向けていたのは……吉良。


だが、大友と吉良では力量の差があり過ぎるように思えるが。


「くっ!接近を許したか!」


「おっと、逃がすと思ってんのかよ」


飛び退こうとする大友の左腕に、鎖分銅を巻き付けて距離を保つ。


遠距離武器、そして素早い相手に対して距離と速度を封じるか。


死を前に、頭がやけにクリアになって、状況を冷静に分析出来ている。


恐怖で心が折れたはずなのに、どうしてまだ戦いを見届けようとしているのか。


「随分情けない姿だな。バベルの塔に向かうってでかい口叩いて、お前はそんなザマかよ?え?昴」