東京ヴァルハラ異聞録

着地して、素早く振り返った俺に、不敵な笑みを浮かべる黒井。


「昴くん……沙羅がやるから、その間に逃げてほしいんだけど」


「冗談だろ。逆に俺がやるから沙羅が逃げてほしいよ」


「それは……やだ」


いつもはふわふわしている沙羅が、強い口調でそう言った。


「おいおい、逃がすわけがねぇだろうが。俺と遊べ!あの時みたいに興奮する戦いをしようぜ!」


その言葉は……俺に向けられている物ではないと、黒井の目を見てわかった。


黒井は俺を見ているわけじゃない。


俺に、高山真治の姿を重ねて……高山真治と戦っているんだ。


そう感じた時、俺は無性に腹が立って。


「……沙羅、ここは俺がやるから、下がっててくれ」


「え!?何言ってるの!?沙羅は逃げないって……」


「違う。こいつは、俺が戦わなきゃならない相手だってわかったんだ。たとえ負けても、こいつだけは」


そう言い、PBTから篠田さんの帽子を取り出すと、それを深く被った。


「俺は高山真治じゃない。結城昴だ!」


「そういう事は、あいつより強くなってから言えよ。今のお前は、人と比べられたくなくてわがままを言ってるだけだろうがよ!」