東京ヴァルハラ異聞録

「ヤバいな……でも、今の攻撃なら、自分の事だけ考えていれば何とかなるかもしれない」


それでも、一つのミスが命取りという事には代わりがない。


攻撃速度だって、俺よりも速くて回避するのがやっとだ。


俺よりも……軽やかに動く沙羅の方が気になる。


羽毛のようにふわりと舞う沙羅の動きは、確かに速い事は速いけど、俺よりは遅い。


竜巻のような黒井の攻撃に巻き込まれれば、死しか見えない。


「おー、良い度胸じゃねぇか。だったら、今度は手加減無しでやってやろうか?」


「な、なに?」


あれが……手加減をしていたって言うのか?


だとしたら、こんな化け物に勝つ手段はないぞ!?


「まずお前」


黒井がそう言い、ランスを構えた瞬間、俺は慌ててポケットに手を突っ込んだ。


それが隙になったとは思わない。


神経は黒井に集中させてたし、回避姿勢を取っていたから。


でも……俺は貫かれて、上半身と下半身を分断され、ビルの屋上から地上へと落下していたのだ。


「ちょっと本気を出すとこれかよ。ぬるいぬるい」


黒井が笑い、俺から目を逸らして沙羅の方を向いた瞬間。


俺はPBTを操作し、瞬間回復を行うと、空中で動きが止まった。