東京ヴァルハラ異聞録

「う、うん!ごめん!」


美姫がこの場から離れたのを確認して、俺は黒井に日本刀を向けた。


「なんだよ。雑魚なら雑魚らしく、全員でかかってこいよ。お前ら二人で俺に勝てるとでも思ってんのかよ!!ああっ!?」


凄まじい闘気!


死神の鎌を首に当てられたような殺気を殆ど感じない。


純粋に戦う事を楽しんでいるかのような、混じり気のないプレッシャー。


口では殺し合おうとか言っていても、戦っている上で死ぬなら仕方がない……程度にしか思っていないのだろう。


それ故に……やはりこの男は危険!


「どうしたどうした?来ないなら……俺から行くぞオラァッ!!」


そう言うと同時に、黒井がランスを構えて突進して来た!


この攻撃は……ヤバい!!


「沙羅!」


「昴くん!」


お互いに同じ事を考えていたようで。


俺は沙羅に、沙羅は俺に蹴りを放ち、お互いの足の裏が合って、お互いを弾き飛ばした。


直後、その間をランスを構えた黒井が通り過ぎる。


「はっ!粋な避け方するじゃねぇかよ!!」


避けた……わけじゃない。


死ぬと感じたから、沙羅を助けようと蹴っただけだ。


恐らく、沙羅も俺と同じ事を考えていたのだろう。


ただの偶然。


それが俺達を生かしただけだった。