東京ヴァルハラ異聞録

「……ん?」


男は俺の胸を矢で貫いて、油断するかと思ったけれど……それが実体ではないと気付いてすぐに後方に飛んだ。


殺気の分身。


さっきは全く騙されなかったけど、今回は騙されてくれた!


既に男に向かって飛び掛かっていたけど、それに反応したのか後方に飛ばれた。


ただの遠距離攻撃特化の男じゃない。


近距離攻撃用の武器を持った人間相手にも、対応出来るだけの力を持っている。


「強いな……あんた。是非とも名前を聞いておきたいんだけど」


「名前など、PBTで調べればいいだろう?」


「そうしたいのはやまやまなんだけど、PBTを出したら矢で射抜かれるかもしれないからさ。それに……そんな隙をあんたが見逃してくれるとは思えない」


日本刀を鞘に納め、矢の速度に対抗出来る攻撃を繰り出すために構えた。


「……人に名を尋ねる時は、自分からと教わらなかったか?」


男も矢を取り出し、弦を引く。


「結城昴。18歳の高校三年生です」


「大友葵、31歳。職業は別に言う必要はないよな?」


お互いに名乗った直後、大友の指が矢から離れた。


凄まじい速度で俺を目掛けて飛んで来る。