東京ヴァルハラ異聞録

「ぐうっ!?」


どうして……矢の速度は見切ったはずなのに!!


バランスを崩し、屋上に落下した俺に、さらに男は弓を構える。


「俺の攻撃が通用しないって?この程度の攻撃も回避出来なくてか?」


なんだ……今のスピードは。


俺が慣れたさっきまでの矢の速度は……フェイクだったのか!?


「相手との距離が遠ければ遠いほど、矢の速度が落ちるのは当然。それなのにお前は、俺に近付いているのに矢の速度に慣れたと勘違いしたんじゃないか?俺が弱く射っていたとも気付かずに」


冷たい視線、勝利を目前に、微かな笑みさえも見せずに。


ただ、当然の事だと言わんばかりに作業的に敵を殺す。


会って間もないけれど、この男からはそんな雰囲気が醸し出されている。


確かに、この男の言う通りだ。


強いやつに勝つ為に、色々考えて……それを乗り越えた気になっていい気になっていたのかもしれないな。


だからって、こんな所で死ぬわけにはいかない!


男を睨み、殺気を放った俺に反応するように、矢が手から離れた。


超高速で放たれた矢が、俺に迫る!


これが本気の矢の速度なのか……。


音速を超えたその攻撃が、俺の胸を貫いた。