東京ヴァルハラ異聞録

「フン。男と女の惚れた腫れたの痴話喧嘩など、大なり小なりどこにでもあるものだ。別に驚きはしないが……神凪はまだ秋本の質問には答えていない。なぜ戦いに出て来なかったのかという質問にな」


痴話喧嘩に興味などないと言わんばかりに、恵梨香さんが前に出て尋ねた。


「えっと……その話は俺が代わりに……」


「貴様は黙っていろ。私が聞きたいのは神凪の口からだ。それとも……自分の口からは直接言えない理由があるのか?」


恵梨香さんがそう言い、神凪を睨み付けると……神凪は観念したように口を開いた。


「東軍の死神……あんたに脅されちゃあ、言うしかないよね。殺されたくないし……何より、私は死ねないからさ」


そして、神凪は秋本の手を払って俺達の前に歩み出た。


戦わない理由……それは一体何なのか。


そう言えば、俺達が来ることを知らなかったみたいだし、そんなの連絡を受ければすぐにわかることなのに。


もしかして……。


「神凪派……なんてのは名前だけだよ。実際は将太、龍拳、麻衣の三人が私の代わりに動いてくれてるだけ。私はもう死ねない……PBTが破壊された日から、私は皆に生かしてもらえてるだけだから」