東京ヴァルハラ異聞録

こ、こんな状況で沙羅に何を言えば良いのか。


目的は同じ……だけど、あの日の事が心に引っ掛かっている。


「えっと……あの……」


「昴くん……梨奈さんを見捨てたって本当?助けに来なかったって」


心を突き刺すような冷たい視線を向けられて、言葉が出てこない。


「そ、それは……確かに助けられなかったけど……うん?助けに来なかったって?」


俺達は沙羅と梨奈さんを助けに行った。


それは神凪派のやつらは知っているはずだけど……。


「俺達は浅草寺に助けに行ったぞ。将太達と手を組んで、二人を助けようって!でも、梨奈さんは見捨てられたんだ!沙羅だけを助けて!」


「嘘でしょ?沙羅が聞いた話と違ってる……絶対に勝てない戦いだからって、昴くん達は来なかったって……違うの?」


沙羅がそう言って龍拳を見るが、その龍拳は慌てて目を逸らして。


「沙羅を騙したの?龍拳も将太くんも……麻衣ちゃんも!!何も知らなかったのは……沙羅だけなの?」


怒り……と言うよりは悲しみの方が勝っているのだろうか。


悔しそうな表情を浮かべ、ポロポロと涙を零していた。


また……こいつらの嘘で人が傷付いたのか。


許さない!と、言いたいところだけど、沙羅を戦力として手元に置いておきたいという気持ちはわからなくもないし。


元々神凪派だったんだから。