東京ヴァルハラ異聞録

前の持ち主がどんな人なのかは、俺は知らない。


知らなくても……何か、いずれ会えそうな気がしている。


そんな事を考えながら移動を続け、やって来た両国。


「さて、ここから北軍に入るには、ポーンと戦う事は避けられない。下手すればナイトも寄ってくる。戦っても構わんが、出来るなら戦わずに移動したいものだが……」


光の壁の近く。


バベルの塔に侵食された両国国技館を望める首都高で、俺達は飛び出すタイミングを窺っていた。


「なんかさ……前よりポーン増えてない?それに、北軍の入り口が池か。こりゃあ、走り抜けるのも大変だぞ」


悟さんの言う通り、ポーンが以前よりも増えているような気がするし、北軍に入ってすぐに池がある。


強い者でなければ、越えることすら出来ないだろう。


「だったら……美姫に任せてよ。ここの移動くらいなら、何とかなりそうな気がするし」


そう言い、首都高に停まっている車を見て、それを指差した。


そうか、三宅と戦った時に、俺とマスターを歩道橋まで運んでくれたみたいに、車に乗ってそれを持ち上げてもらえば。


ポーンに襲われる事なく、安全に移動が出来ると言うわけだ。