東京ヴァルハラ異聞録

「どうした?そんなものか?私はまだ一歩も動いてはいないぞ?」


クルクルとトンファーを振り回す恵梨香さんに危険な匂いを感じ、後方に飛び退いた俺達。


三人が攻撃をして、本当に一歩も動いていないなんて。


両国で戦った時のように、動きを読む事も出来ない。


あの時の感覚が眠っているようだ。


「それで終わりなら、次は私から……むっ?」


そこまで言って、恵梨香さんは何かに気付いたかのように空を見上げた。


これはフェイントか何かかと思ったけど……何か強大な力が、頭上の方にあるのを俺にも感じる事が出来た。


「なんだ……あれ」


恵梨香さんに続いて空を見上げた俺は……巨大な物が空から落下しているのが見えた。


「このタイミングで来るか……あれは恐らく、『ルーク』だ」


ルーク……ポーン、ナイトと来て次はルークか。


チェスの駒みたいだな……なんて、言ってる場合じゃないぞ。


ナイトでさえ倒せないのに、さらに新しいルークまで来るとか、どうすればいいんだよ!


「お、落ちるぞ!侵攻部隊……橋本さん達の方だ!!」


悟さんがそう叫んだ直後、巨大な塊は西軍の北の方に落下した。


凄まじい揺れと地鳴りが俺達を襲い、立っていられずに倒れてしまったが、恵梨香さんだけはこの揺れの中でも倒れる事はなかった。