東京ヴァルハラ異聞録

「か、和也……頼む、見逃してくれ!早く南軍に戻らないと、こいつが死んでしまうんだ!」


女性に肩を貸している男性が、俺と梨奈さんを見て懇願する。


確かに女性は、左足を切断されていて、頭部からも出血がある。


こんな時、沙羅ならどうするんだろう。


攻撃してこないから攻撃しない……とか言うのかな。


なんて考えていると、梨奈さんが口を開いた。


「侵攻する時は、死を覚悟するものでしょ?あなた達は時間いっぱいまで西軍にいたわけよね?だったら何人殺したの?人を殺しておいて、自分は助けてくれって随分都合の良い話だと思わない?」


梨奈さんの言葉に、反論出来なくなったのか、男は悔しそうな表情を浮かべて俯いた。


もう、何が正しい行動なのかわからない。


元の世界では普通に生きていた人同士が、敵味方に分かれて殺し合っている。


郷に入っては郷に従え……とでも言うのか、この世界ではそれが普通なのだろうけど。


「何を話しても無駄よ。昴くん、あなたがやりなさい。甘い考えを、ここで断ち切るの」


梨奈さんの強い言葉に、俺は悩んだ。


俺達を殺そうと襲って来るやつと戦うならわかるけど、負傷して退却しようとしている人を殺すのは……違和感があったから。