東京ヴァルハラ異聞録

「……ど、どうしてそのまま振り下ろさなかったんですか?」


「お前こそ、どうして振り抜かなかった。俺が武器を取り出す直前を狙っていたんじゃないのか?」


お互いにそこから微動だにせず、近距離で睨み合ったまま。


「もういいじゃろう。これ以上やれば、お前達だけではなく、キングまで破壊してしまうぞ。この坊主は、手を抜いたまま戦って勝てる相手じゃないぞ」


階段を下り、御田さんが俺達にそう言って歩いて来た。


これで……手を抜いているだって?


いや、確かに久慈くらい強ければ、俺に見抜かれるような隙をいつまでも放置するわけがない……か。


御田さんの言葉に、振り返って真由さんと篠田さんを見る久慈。


「……俺と戦いながら、そこまで考えていたか。なるほど、タケさんがお前にそれを託すわけだ」


武器を下ろし、フウッと溜め息をついて帽子を指差して見せた。


この部屋に充満するほどの殺気が……もう感じられない。


「あの時、お前に手も足も出なかった坊主は、ここまで強くなった。タケさんの想いは、しっかりと受け継がれとるよ」


御田さんに肩を叩かれて、ゆっくりとステージに向かった久慈は、壇上の二人の前で足を止めた。


「……あの日俺は、タケさんを殺した。それは事実だ」


そして、ぽつりぽつりと話し始めたのだ。