東京ヴァルハラ異聞録

美姫は力を使えばお腹が減ると言っていた。


あれだけ何度も使った後だ、姿も隠せずにいるかもしれないから。


「しょ、正気ですか!?あなたも川本さんも三宅には負けているんですよ!?それなら私が戦いますので、昴くんが屋上に向かっては……」


「そうだぞ結城。どうして西軍のお前が私達を助けるのかはわからないけど、お前みたいな弱っちいやつが勝てるほどこいつは弱くないぞ」


マスターも川本も、なかなか酷い事を言うな。


それでも、こいつが篠田さんの後継者を自称するなら、わからせてやりたいから。


篠田さんは……一人の女性の為だけに生きた優しい人だった。


三宅が言ように、力で全てをねじ伏せるような一面もあっただろうけど、それが全てではないと。


「逃げちゃいけない戦いって、何度かはあると思うんですよ。俺にとってのその戦いの一つが、この戦いだと思うんです」


帽子を託された俺が、篠田さんの後継者だなんて言うつもりはない。


ただ、大切なものを守り抜いたその想いは受け継ぎたい。


「……わ、わかりました。すぐに戻ります。ですが昴くん、本当に大丈夫ですか?」


「大丈夫です。絶対に勝ちますよ、マスター」


帽子のつばを撫でた俺はそう答えた。


「ぶち殺してやるよ、クソガキ共」