東京ヴァルハラ異聞録

ここまで速い動きが出来るものなのか?


確かに悟さんも、俺ではとても出来ないような動きをしていたけど……これが、強くなるって事なのか。


「な、なかなかやるじゃないか。まさか俺がここまでやられるとは」


「あなたでは勝てない。だって私の方が強いもの」


「はっ!ふざけるなよ?」


男はそう呟くと、死神に見えないように身体を捻り、低く構えるとロングソードの先端を自らの左手に突き刺したのだ。


構え直し、左手をグッと握り締める。


死神に見えないようにしているけれど、ポタポタと血が地面に落ちて、出血が激しいのが分かる。


自分を傷付けて、何を狙っているのか。


もしかして……。


男が死神に駆け寄る。


ロングソードを振り上げると、死神の視線もそちらに向く。


死神は……左手に気付いていない。


「左手!!」


思わず叫んだその声に、死神がハッとしたように体勢を低くする。


男が左手を振り上げ、そこに溜まった血が、死神の頭上に飛び散った。


やっぱり……血で目潰しをするつもりだったのだろう。


だけど、どうして俺は死神の味方をするような事を言ったのか。


「くっ!」


「これで終わり」


そう言った死神は、隙が生まれた男の背後に回り込み、背中にナイフを突き立てたのだ。