東京ヴァルハラ異聞録

こういう時は、広く網を張るのが基本だと思うけど……俺やマスターならすぐに移動出来る。


それに、ここなら一方向を注視していれば良いだけだから、マスターの言う事は一理ある……か。


道路の方のざわめきが、隠れている俺の耳にも届く。


「周囲を警戒してくださいね。これでは音で接近を察知出来ませんからね」


隣のビルの屋上に行く階段はここから見えている。


そこを見ながらも、こういうざわめきを聞く度に、元の世界の事を思い出して少し落ち着く。


しばらくして、ざわめきがさらに大きくなった。


「むっ!昴くん、美姫さん!現れましたよ!三宅です!」


隣のビルの階段に、三宅が男4人と美佳さんを連れて現れたのだ。


三宅以外顔は見えないけど……川本がいない?


後で連れて来るのなら、現れてからにした方が良いのか。


「川本さんがいませんね……これはどういう事でしょうか」


マスターにわからないのに俺にわかるはずがない。


「さあ……とにかく様子を見るしかないですよね。三宅を殺す事が目的じゃないですから」


ここで殺してしまえば、川本の居場所がわからなくなる。


それを知っている人が誰か……俺達は知らないのだから。