東京ヴァルハラ異聞録

そうそう上手い話はないって事か。


「まあ、それにしても誰にも見付からずにここまで来るって、どうやったんだよ。隠れるのが上手くても無理があるだろ」


それも美姫の力なのかと思ったけど、見ていないから信じられない。


「うーん、じゃあこれで信じる?」


美姫がそう言った瞬間、姿が消えてしまった。


確かに俺の左隣にいたのに、まるで煙のように。


「ね?見えなかったでしょ?」


そして、今度は右隣に現れて、俺の肩をポンポンと叩いたのだ。


これは超スピードで動いたとかいうレベルじゃない。


完全に消えていた。


「瞬間移動……か?」


「そんなわけないじゃん。私はゆっくりと立って、昴くんの前を通ってこっちに座ったんだよ?」


「嘘だろ……何も見えなかった」


これを見せられたら、さすがに信じるしかない。


南軍とゼロ・クルセイダーズがいる中を、誰にも見付からずにやって来たのだと。


「それで?どうして昴くんは落ち込んでるの?」


俺の顔を覗き込んで、優しく微笑む美姫。


「まいったな……サイキッカーだからって、人の心まで読めるのか?」


「そんな事出来るわけないでしょ。顔を見たら誰だってわかるよ」