東京ヴァルハラ異聞録

かと言って、俺は武器を手放す気にはなれず、日本刀を構えたまま口を開いた。


「以前……川本とは共に戦った事があります。だから助けたいってわけじゃないですけど……目の前でPBTを破壊されるのは防ぎたい。もう、あんな悲しみは味わいたくないから」


思い出したのは梨奈さんと篠田さんの姿。


どちらも、俺の目の前で命を絶たれた。


あんな思いをするくらいならと強さを求めたけれど、まだ届かない。


「だからですか。先程感じた殺気が、今のあなたの刃には込められていなかった。もちろん、あのお二人を逃がす為の時間稼ぎという役割から、とも考えましたが。どうやらそうでもないようですね。申し遅れました。私は大塚紀久です。失礼ですが、お名前を……」


PBTで調べれば、俺の名前くらい出てくるだろうに。


それでも、それをせずに名前を聞くというのはこの人なりの礼儀なのか。


「結城……昴です」


「良い名前ですね。では昴くん。一つ提案があるのですがよろしいでしょうか?」


戦いが始まる前から、ずっとマスターのペースだな。


千桜さんと籾井さんはもう逃げたし、マスターと戦うメリットはないから。


「どんな提案ですか?」


話を聞いても良いだろうと、日本刀を下ろした。