東京ヴァルハラ異聞録

「……二人が逃げたから、やる意味もないんですけど。さすがに俺は逃がしてはくれませんよね?」


大塚から離れ、日本刀を握り締めて刃を向ける。


「申し訳ございませんが、それはちょっと。私もキングの場所が知りたいので、ただで帰すわけには……」


ペコペコと何度もお辞儀をする。


でも、ニンジャマスターと呼ばれる意味は何となくわかったような気がする。


「わかりました。じゃあマスター……行きます」


大塚をマスターと呼ぶのは、俺なりに敬意を表したつもりだ。


敵で、明らかに年下である俺にも丁寧な言葉遣いで、何より千桜さんと籾井さんが逃げるのを待っていてくれたのだから。


「どうぞ、よろしくお願いします」


マスターが頭を下げた。


そして、その頭を上げて三節棍を構えたと同時に、一歩踏み込んで日本刀を振り下ろした。


だけど、その斬撃は屋上の床に当たり、そこを斬り裂いただけ。


「うひゃぁっ!速いですね!当たったら間違いなく真っ二つですよ!」


日本刀の僅かに横。


ギリギリ刃が触れるかどうかという所で、マスターは身体を震わせて立っていた。


刃を返し、すかさず横に振る。


だが、マスターは刃の上に飛び乗り、スキップをして近付くと、俺の顔を蹴り上げたのだ。