東京ヴァルハラ異聞録

右から左から、トンファーが高速で迫る。


いつもの俺なら絶対に防ぎ切れない攻撃。


だけど、なぜか今はその軌道が見える。


と、言うよりも、この女性の攻撃が手に取るように見えた。


「やるな!少年!」


「そっちこそ……相変わらずやりますね、恵梨香さん!!」


不意に、そう声が出た。


何も考えていなくて、心の底から出たような感覚。


それに驚いたのは俺だけじゃなかった。


女性も俺の声に驚き、日本刀の前でピタリと動きを止めたのだ。


フルフェイスに刃がコツンと当たる。


その瞬間、ヘルメットが砕け散って、中から金髪の美しい女性の顔が現れた。


どんな顔をしているかと思ったら、とんでもない美人じゃないか。


自分から俺に戦いを挑んでおいて、一つわからない事がある。


「あ、あの……どうして泣いているんですか?」


女性は、顔をくしゃくしゃにして、ポロポロと涙を流していたから。


「う、うるさい!泣いてなんていない!これは……そう、退屈すぎて欠伸が出ただけだ」


慌てて涙を拭う女性を前に、俺はもう武器を振るう事が出来ずに。


「そ、そうですか。まだ、続きをやりますか?」