東京ヴァルハラ異聞録

大した意味もなく、俺に被せた物だと思っていた帽子。


「託されたとか……そんな物じゃないと思います」


「そうか?俺は最初から、お前はタケさんに目をかけられていたと思ってるよ。じゃなきゃ、決闘させたり一緒に北軍に侵攻したりしないと思う」


そうなのかな。


よく考えれば、俺は篠田さんの事をそんなに知らない。


ただ、凄まじく強い男だとしか。


「そうだよな。裏切り者って言った割に殺さなかったし、悟の奪還まで任せるくらいだし」


愛美が言った言葉に頷き、悟さんが口を開く。


「それに、託されたのは帽子だけじゃないだろ。お前もタケさんを見て、感じたものがあるんじゃないのか?」


そう言い、悟さんは俺の胸に拳を押し当てた。


「……強くなりたいです。篠田さんのように」


「よし、じゃあ強くなろう。俺だって強くならなきゃと思ってたんだ。一緒にさ、タケさんより強くなってやろうぜ」


悟さんはいつも頼りになる。


つらい時に、いてくれるだけで救われるような気にさせてくれる人だ。


「私は……梨奈さんが死んで、どうしてそんな風に前向きに考えられるかわからないよ。しばらく一人で考える」


そんな中で、美佳さんがそう呟いて離れて行った。