東京ヴァルハラ異聞録

「おい、将太!船が来た!そんなやつに構ってないで行くぞ!」


沙羅を抱えた龍拳が、橋の下を覗き声を上げる。


「こいつを殺してからでも問題はない。すぐに行く」


そして、将太のデュランダルが振り下ろされる。


ここで死ぬのか。


篠田さんに足止めをしろと言われたのに……それすら出来なかったなんて情けない。


身体を支える事がやっとで、回避する事もできない。


悔しさに包まれ、目を閉じたその時。






「ダメ!殺さないで!早く……行くよ」






麻衣の声が聞こえ、目を開けると、将太の腕を掴んでいる麻衣の姿があった。


その行動に、将太は怪訝な表情を浮かべたが、すぐにフッと鼻で笑って武器を下ろした。


「命拾いしたな。麻衣に感謝しろよ?じゃあな」


そう呟いて、龍拳がいる場所に移動した将太と麻衣は、橋の下を確認するとすぐさま飛び降りたのだ。


くそっ……逃げられた。


梨奈さんを助ける事も出来ず、沙羅を取り戻す事も出来なかった。


俺は……何の為に戦ったんだと、絶望に包まれてその場に倒れた。


悔しくて、地面に拳を叩き付けて。


悔しくて、涙が零れた。