東京ヴァルハラ異聞録

「ふぅ……誰に言ってんすか英太さん。とはいえ、少しばかりダメージがでかいすね。おい、昴。お前先に行ってろ。吾妻橋だったな?足止めしてろよ」


左脚の太もも辺りの傷が一番大きなダメージなのか、足を引きずって。


「この中では一番身軽なのはボウズだ。ワシらを謀ったお礼はせんといかん」


御田さんにも言われ、チラリと梨奈さんを見る。


ここにこうして見せしめのように縛られているのは、あまりにも可哀想だ。


屋根の上に飛び上がって有刺鉄線を日本刀で斬り、崩れ落ちる梨奈さんを受け止めた。


「ごめんなさい……梨奈さん」


梨奈さんを抱えて屋根から飛び降りる。


「ワシが連れて行く。じゃからボウズは早く行け!」


「梨奈さんを……お願いします」


御田さんに梨奈さんの亡骸を渡し、次にあぐらをかいて脇腹を押さえている拓真を見た。


「……敵として再会しなければ、こんな事にはならなかったのかもしれないな」


出来る限り怒りを抑え、そう呟いた俺は、将太達が向かったであろう吾妻橋へと走った。


この辺りは低い建物が多い。


道を走るよりも建物の上を移動した方が早い。


今から先回りが出来るかはわからないけど、行くしかない!


足の裏に力を込め、俺は建物の屋根に飛び乗った。