東京ヴァルハラ異聞録

ここでの騒ぎに気付いたのか、付近で待機していた人達が集まり始める。


「篠田さん!人が集まって来ました!」


「わかってるよ、めんどくせぇな」


俺にそう答えると、篠田さんは道路沿いのビルの前へと移動した。


トントンと指で壁を叩いて、何かを確かめているみたいだ。


「ボウズ!離れろ!巻き添えを食うぞ!」


「ま、またですか!?」


御田さんの声に、慌てて後方に飛び退いた。


すると、篠田さんは拳に力を溜めるようにして腰を落とし、ビルの壁を殴り付けたのだ。


一箇所だけではない、道路に面する壁という壁を殴り、素早く俺のいる方に飛び退いた。


迫る北軍の人達。


武器を構えて迎え撃とうとしたけど……地響きのような音と共に、ビルがゆっくりと傾き始めたのだ。


「う、うわっ!戻れ戻れ!」


「ば、馬鹿!押すんじゃ……ああああああああっ!!」


激しい砂埃を巻き上げ、北軍の集団にビルが倒れ込んだのだ。


「相変わらず無茶するのう。ビルを倒すなんて、お前さんにしか出来ん芸当だな」


「明日になりゃビルも元通りだ。何も問題はねぇ」


と、とんでもない人だな。


こんな人に一度でも戦いを挑んだかと思うと、死ななくて本当に良かったと思うよ。