東京ヴァルハラ異聞録

御田さんにお礼を言っていなかった。


そう思って話し掛けると、御田さんは振り返りもせずに。


「なんでかなあ。こんな街にいると、人を殺す事ばかりじゃろ?お前さんのように、人の為にってやつをめっきり見なくなった。誰もが自分の命が大事だから、それはわかるがな。だけどそれだとあまりに寂しいじゃないか」


御田さんにもそんな人がいたのだろうか。


その言葉には、なんとなく寂しさが紛れているような気がした。


「信念がねえんだよ。どいつもこいつも。結城昴、お前の一番強い想いはなんだ?言ってみろ」


篠田さんに言われ、考えるまでもなく口を突いて出た言葉。


「沙羅を……失いたくないです」


そう言うと、御田さんと篠田さんはクスクスと笑って。


「いやあ、若いっていいなあ。真っ直ぐで。タケさん以上に純粋かもしれんぞ?このボウズは」


「俺の方が純粋でしょ。お前もマジな顔して言ってんじゃねえよ。笑っちまうだろうが」


言えと言われたから言ったのに。


まさか笑われるなんて思わなかった。


「笑わないでくださいよ。俺だって真剣に……」


「んな事はわかってんだよ。真剣じゃねぇやつに、英太さんが力を貸してくれるかよ。感謝しろよお前」


そう言い、篠田さんは俺の頭に手を置いた。