東京ヴァルハラ異聞録

この男に何があったかはわからない。


その言葉は、篠田さんの物と同じくらいに重いものだと感じたから。


それでも、このまま沙羅を連れ去られるわけには行かないから。


「沙羅は返してもらう。お前と行く事が沙羅の望みじゃないなら、沙羅は渡さない」


「そういうセリフは一人前の男が言うもんだ。身の程知らずのガキが吐くセリフじゃねぇよ」


秋本がハルベルトを構える。


と、同時に動き出す。


一連の動作が速い!


迷いがないというか、自分は絶対に負けないという自信がそうさせているのか。


高速で迫る秋本に、負けじと日本刀を滑らせる。


頭部を切断するように横に薙ぐけれど……それは秋本をすり抜けてしまったのだ。


「なにっ!?」


手応えがない!


いや、実体がない!


秋本の足元の、緑の影が薄い。


それが徐々に濃くなり……。


これはまずいと感じた俺は、日本刀を頭上に振りながら横に回避する。


上を向いている暇なんてなかった。


日本刀に衝撃が加わり、俺は空から落下してきた秋本が、着地すると同時に飛び掛かった。


「フェイントに気付いただけでも大したもんだぜお前!」


「今のがフェイント?冗談きついよ!」