東京ヴァルハラ異聞録

延吉が杖を両手で持った。


何かすると察知したのだろうか、梨奈さんが後方に飛び退くと同時に、延吉が杖を横に振り抜いたのだ。


銀色の刃……延吉の手に持たれていたのは仕込み杖?


武器を出していないと思ったけど、既に手にしていて俺達の隙を窺っていたのだろう。


「チィッ!大人しく死んでいればいいものを!」


「二度、同じ手に引っ掛かってたまるもんですか!」


そう言うと、すかさず風火輪を投げ付けた梨奈さん。


高速回転するリングが、延吉に迫る!


「この程度、避けるまでもないわい」


余裕を見せて、仕込み杖の鞘の部分でそれを受け止めようとした延吉だったが……風火輪のリングに付いている刃が、ノコギリの歯のように鞘を削る!


だけど、その回転は途中で止まり、風火輪は消えて梨奈さんの手に戻ったのだ。


「な、なんちゅう破壊力……危なかったわい」


避けるまでもないと言った手前、避けるわけにはいかなかったのか、延吉が驚きの表情を浮かべてそう呟いた。


この調子なら、梨奈さんに任せておいても大丈夫かな。


問題は俺の方。


低い体勢で槍を構えて、俺を凝視している悟さんだ。