東京ヴァルハラ異聞録

いや、それよりも、また俺は動きを捉えられなかった。


千桜さんには見えていたのにだ。


「今のが見えたんですか?俺には全く見えなかったんですが」


「わたるくんは、相手を観察するという事をしていないですよね。自分の力だけで、相手を押し切れる……そう考えていませんか?」


そう言われると、完全に否定は出来ない。


「何二人で話しとんねん!舞を忘れてるんとちゃうやろな!?」


そうは言っても、右肩を怪我しているからか、攻撃を仕掛けてくる様子はない。


「僕が教えても良いですけど、これを機に相手を観察してみては?実に単純なところに気付けていないのかもしれませんよ?」


相手の観察か。


日本刀を構えて舞を見ているけど、良くわからない。


俺の目をジッと見て、全然目を逸らそうとしないし。


あまり凝視しすぎて、目が乾いて瞬きをした直後……舞は消えてしまったのだ。


どこから現れるかわからない!


慌てて俺は前方に飛んで前転。


すかさず日本刀を振りながら振り返ると、舞が俺がいた場所の背後に立っていて、千桜さんの拳をレイピアの腹で受け止めていた。


今ので……舞の動きの謎が解けた気がする。