東京ヴァルハラ異聞録

「いや、まだヴァルハラだ。こいつらがどうしても真由に会いたいって言うから連れて来たんだ」


篠田さんの声が優しい。


俺の思い違いだったのか、魂の鎖らしきものはどこにも見当たらない。


篠田さんの意のままに動いている……とは言い難いし、考えすぎだったか。


嵐丸さんと久慈さんは廊下にいて入って来ないし。


この光景は何なのか、俺にはまだ理解が出来なかった。


「そうなんだ。珍しいじゃん。タケさんがここに他の人を連れて来るなんて。ありがとうね。お姉ちゃんと友達に会えて嬉しい」


満面の笑みで、篠田さんにそう言った真由さん。


篠田さんは俯いて、照れ臭そうに。


……俺達は殺されかけたけどな。


「そっちの男の子は……誰?」


この中で、明らかに場違いな俺を見て、真由さんが尋ねる。


「ストーカーだよストーカー。ずーっと真由を探していたらしいぜ」


そう言って、俺の背中を押す篠田さん。


「あ、えっと……一年前に、秋葉原駅のトイレの鏡で真由さんを見て……ずっと探してたんです。でも、やっと会えた」


「一年前……もしかして、あの時に驚いてた男の子?私、覚えてるよ」


まさか、真由さんが俺を覚えていてくれたなんて。


それが嬉しくて、俺は腕の痛みを忘れて笑顔になった。