東京ヴァルハラ異聞録

久慈さんとの話で、篠田さんの心境にどんな変化があったのかはわからない。


それでも、なんとか殺されずに済んだと安堵して、PBTで怪我の回復をしながら、篠田さんに付いてエレベーターに乗った。


嵐丸さんもダメージはあるものの、無事ではあるようで。


同じビルの7階、劇場のような造りのフロアで降り、扉を開けて中に入った篠田さんに続いて中に入った。


広いフロアに、正面にはステージ。


ライブハウスのような場所に入り、俺は小さく声を上げた。


そして……。


「真由、おはよう」


篠田さんがそう呟くと、ステージ上に座っていた人が、立ち上がって俺達を見たのだ。


その人物は……まさしく、俺が一年前に秋葉原駅のトイレで見た女性。


あの時の恐怖に満ちた表情とは違う、穏やかな笑顔を見せていたのだ。


「真由!」


「真由ちゃん!」


その姿を見た途端、梨奈さんと沙羅が駆け出す。


ステージに上がり、二人して真由さんに抱きついて。


「お、お姉ちゃん……それに沙羅ちゃん。どうしてここに?私は……元の世界に戻れたの?」


その光景を見て、ただ会いたいだけで真由さんを探していた俺は、とても入れないと感じた。