東京ヴァルハラ異聞録

俺を取り囲んでいたやつらが、突然ざわめき始めた。


どこか一点を見詰めているような……俺の背後のどこかを。


そう思った瞬間、ゾクリと悪寒が走った。


慌てて振り返ってみると、そこにいたのは……。



「お前ら、いつまで見てるつもりだよ。総力戦が始まるだろ?配置につけよ」



見上げるほどの巨漢。


俺の太もも程もあろうかという太い腕。


そして肩に担いでいる金棒。


久慈さんと愛美と一緒に、俺を捕らえに来た男!!


「くっ!」


愛美に勝ったばかりだと言うのに、今度はこの男かよ!


さっさと逃げれば良かったと後悔する。


だけど……この男は、俺を見下ろしても攻撃をしてくる素振りを見せなかった。


「見てたよ。愛美に勝つなんてやるな。もうすぐ総力戦が始まるんだ。無駄な事してないで、お前も来い」


そう言って、クイッと顎で南軍の方を示したのだ。


「……お、俺を殺しに来たんじゃないんですか」


「タケさんには『持ち場に戻れ』って言われてる。お前を殺せとは言われてない。それに……タケさんがお前を殺すつもりなら、わざわざ三階から落としたりしないだろうからな」