東京ヴァルハラ異聞録

「沙羅一人だったら、簡単に逃げられたんだけど……昴くんが来ちゃったから」


つまり、俺は余計な事をしたってのか。


いや、こんなのとても沙羅一人じゃどうにかならないと思うぞ。


「昴くんはどうにかして私の後に付いて来て。ねえ、あなた。ここから逃げたかったらこっちに来て。大丈夫、私はあなたの敵じゃない」


沙羅の言葉は、不思議と安らぎを与えてくれるんだ。


猿ぐつわをされた女の子はそれを解き、すがるような目を向けて沙羅に駆け寄ったのだ。


「ほ、本当に助けてくれるの?でも、どうやってここから逃げるの?」


怯えた様子でそう尋ねた女の子に笑顔を向け、沙羅は女の子を肩に担いだ。


「えっ!?ちょっと!」


「うん……これくらいの重さなら大丈夫」


沙羅も細いのに、軽々と女の子一人を担いでしまったよ。


と、言うか……お尻がこっちに向いてるから、パンツが丸見えなんだけど。


「ここから逃げたら、昭和通りを南下して、南軍の光の壁まで走るよ」


「わかった。だけどどうやって逃げ……」


と、俺が尋ねた時には既に、沙羅は集まった人達の頭部を踏み付け、軽快に移動をしていたのだ。