東京ヴァルハラ異聞録

「!?沙羅!」


思わず声を上げてしまったけど、その声は観衆には聞こえていないようだ。


屋上から、交差点の真ん中にあるステージへと、長距離の跳躍。


太った中年が壇上に上がったと同時に、沙羅が軽やかにその隣に舞い降りた。


『おっとぉ!?へいへい!この商品はこちらの紳士が落札したんだぜ?関係ないやつは……って、あれ?』


MCが沙羅に近付きながらそこまで言って、何かに気付いたようだ。


「おい……こいつ、死神じゃねぇのか?」


「な、なんで死神がこんな所に……」


観衆が口々にそう言い始めて、場が徐々に混乱し始める。


恐怖し、逃げ出す人。


武器を取り出し、戦おうとする人。


それは様々だったけれど、沙羅がピンチな事に変わりはない。


『お、落ち着け落ち着け!へいへい!死神だからって、この人数に勝てると思ってんのか!?このオークションは西軍の防衛隊長、嵐……』


脅しをかけようとしたのだろう。


MCが武器を取り出し、誰かの名前を出そうとした瞬間、沙羅のナイフがMCの首を斬り落としたのだ。


やっぱり速い!


ここにいる人の中で、一体何人がその動きを捉える事が出来ただろうか。


そして、沙羅は止まらなかった。