「俺は!悟さんと一緒に北軍に侵攻したんですよ!?久慈さんだって、秋本に襲われている所を助けてくれたじゃないですか!」


「お前さ?西軍の人間を殺しただろ?北軍の人間を庇ってさ。真由の居場所を知りたがるし、何か怪しいと思っていたんだよな。西軍の情報を北軍に売るスパイだろ」


鞭を手に、そう言ったキャップの女性の言葉に俺は頭を悩ませた。


あの時の男……何か負け惜しみみたいな事を言っていたけど、こういう事かよ!


「違う!俺が西軍の男を殺した理由は、北軍の女の子に乱暴しようとしていたから!そもそも、初めて北軍に侵攻したのに、誰に情報を売るって言うんですか!」


「……確かに、昴くんは私と同じ時にこの街に来て、それからずっと一緒にいました。あれ?だったらあの男の人が言ってた事が嘘なの?」


美佳さんが首を傾げて、根本的な事に気付いてくれたようだ。


だけど、大柄の男は再び金棒をアスファルトに叩き付けたのだ。


「知るかよ。タケさんが連れて来いって言ってんだ。俺達の役目は、話の真偽を見極める事じゃねぇ」


「そういう事だ。悪いが昴くん。俺に付いて来てくれないか?抵抗しようなんて考えない方が良いぞ。もしそうなったら、俺は実力行使に出なくてはならないからね」


久慈さんの、穏やかだけど強い口調に……俺は逆らう事が出来なかった。