東京ヴァルハラ異聞録

悔しそうに顔を歪めて、その涙を拭おうともせずに。


「ま、舞桜……気にするなよな。こんなやつらの言った事なんて」


酷い言葉を浴びせられたこの少女に、俺は何て声を掛けて良いのかわからない。


それでも、なんとか慰めたいと思ったけど。


「うるさい!元はと言えば、あんたが来なければ、二人くらいは不意打ちで殺せたんだ!あんな事を言われる前に!」


怒りが、今の男達二人だけではなく、俺にも向けられているのがわかる。


「うん……ごめんな」


本当に何も言えなかった。


それが可能かどうかはわからないけど、俺がいたからこんな事になったのは事実だろう。


憎しみが西軍……いや、自分よりも年上の人間に対して向けられているのだ。


だけど、ショートソードを放し、涙を拭った舞桜。


俺を殺そうというつもりはなさそうだ。


何も言えず、俺は長椅子に座って溜め息をついた。


強くなるには、敵を倒さなければならない。


強くなれば、この街では何だって出来るようになる。


だけど、敵軍の人間であるこの子達を守る事は出来るのか?


出来る事なら早く元の世界に戻してやりたい。


俺が出来ないのに、こんな幼い子達にそれが可能なのか。


どれだけ考えても、どうすれば良いのかがわからなかった。