東京ヴァルハラ異聞録

舞桜がどういう思いで生きて来たか、俺にはわかるはずがない。


だけどこの子が、小さな子供二人を抱えて生きて来たつらさは、その断片だけでも理解は出来たつもりだ。


だからこそ、それを踏みにじろうとするやつは許せなかった。


「ふざけんな!!だったらまずテメェを!!」


俺の肩を叩いた男が、短刀を取り出し、俺目掛けて突き付ける。


「ふざけてるのはどっちだ!」


怒りの声を上げ、俺は男目掛けて日本刀を振り下ろした。


左肩から右の脇腹にかけて刃が通る。


バランスを崩して、斜めに斬られた身体が床に崩れて、男は光の粒に変わった。


「健二!!野郎っ!!」


もう一人の男が武器を取り出そうとするが、それより早く、俺は身体を回転させて胴を上下に分断させたのだ。


「お、お前……裏切るのかよ。西軍を」


床に崩れながらそう呟いた男に、怒りを露わにして。


「西軍とか北軍とか関係ない!俺は、お前らみたいな卑劣なやつが許せないだけだ!!」


「覚えたぜ……お前の顔。西軍に戻っても……安心できると思うな……ぐわっ!!」


男が言い終わる前に、真緒がショートソードを男の心臓に突き立てた。


ゆっくりと顔を上げた舞桜の目から、涙がこぼれ落ちていた。