東京ヴァルハラ異聞録

再び待合室に戻った俺は、長椅子に腰掛けた。


さっきと違うのは、隣に可愛い見張りが付いている事。


「えっと……さっきの二人は兄弟?」


「……」


「キ、キミは中学生くらいだよね?二人の面倒を見てるんだ?」


「……」


何を尋ねても、返事すらしてくれない。


やっぱり敵だと思われてるんだろうなあ。


怪我が治るまでって言ったけど、こんな重い空気なら早く治って出て行きたいとさえ思う。


「俺は、結城昴って言うんだけど、キミは?」


あまりに沈黙が痛くて、俺だけが馬鹿みたいに喋ってる。


「……バカみたい」


正にそうだと思ってた所だよ。


追い打ちをありがとう。


「私、北軍でお兄さんの敵なんだよ?名前なんて教えてどうするの?」


「俺は……敵かもしれないけど、キミの敵になった覚えはないよ。それに、そう思ってるなら、キミだって俺をすぐに殺すはずだろ?」


俺がそう言うと、女の子は口を尖らせて何か考えているようで。


「難しい。わかんない。大人なんてさ、卑怯で嘘つきで、酷い事ばかりする人達だって思ってたけど。お兄さんは目が優しいから。ちょっとは信じてあげようかなって思っただけ」