東京ヴァルハラ異聞録

「グオオオオオオン!」


近距離で、凄まじい悲鳴が聞こえる。


龍拳は思わず耳を塞ぎそうになったが、それでは第一陣最後の攻撃が不発に終わってしまう。


それだけは、プライドにかけてミスをするわけには行かなかった。


「いつまでもいい気になってんじゃねぇっ!!えぐってやるよ!」


手甲鈎を交差させ、久慈と朝倉が広げた穴にそれを突き刺した。


「痛いかよ!!だったらもっと広げてやる!!」


さらに両手の手甲鈎を左右に開き、傷口を広げたのだ。


他の人達はフェンリルの背から飛び降りたが、次に来る秋本の為に、この場を離れるわけにはいかない。


千桜や大塚のように、密偵を担ってきた龍拳だったが、ここだけは逃げる事が出来ないと感じていた。


第一陣の攻撃は思いの外上手くいった。


それは、限界を超えてなお、フェンリルの動きを止めた美姫のおかげではあったが、それを知る者はいなかった。




「秋本さん!私達が攻撃をサポートします!私と千桜さんの場所に、思い切り飛び込んでください!」


「責任重大ってわけか。だが悪くねぇ!こんな大物をぶっ殺せるなら、何だってやってやるぜ!」


「頼みましたよ!」


そう言い大塚は、魂の鎖に繋がれている千桜と共にトラックから飛び降りた。