東京ヴァルハラ異聞録

「皆……行くよ」


美姫はそう呟き、道の脇に停まっているトラックに手を向けた。


グッとそれを持ち上げ、両国駅へと運ぶ。


そして、その荷台に皆が乗った事を確認すると、それを上空へと浮かべた。


力を行使する度血が噴き出して、自身の限界はとっくに超えていると彼女は察していた。


それでも、死を覚悟して力を行使するのは、昴を信じての事だった。


戦えない人。


そうレッテルを貼られた彼女を、昴達は保護し、必要としてくれた。


そうでなければ、もっと早い段階で美姫の命は尽きていただろう。


それがわかっていたから、自分の命が尽きても構わないと思えた。


きっと、塔に入った昴達が元の世界に帰してくれる。


攻撃班を乗せたトラックがフェンリルの背中に接近し、それに秋本が気付いた。


「飛び乗れ!秋本!」


「久慈!」


久慈の言葉に、タイミングを合わせてトラックに飛び乗った秋本。


それを確認して美姫は、手を上にかざした。


グングンと上昇するトラック。


美姫が手を下ろすと、それが反転して急降下を始めた。


凄まじい勢い。


この重量の物を急速に方向転換させるのはさらに負担がかかる。