「……………か、はるかっ」



ぼやけた視界が、ぐらぐらと揺れる。


明るかったはずの外は、いつの間にか真っ暗で。




「………なんで、寝ながら泣いてんの」




いないはずの秋が、心配そうに私の顔を覗き込んでいた。




「………なん、で」


「何でって、俺が聞いてるんだけど……?大丈夫?」


「何で、秋が、いるの……」




声が震えた。


だって、秋の帰る場所は、もうここではなくなってしまったはずで。




「…………ケーキ、買ってきた。コンビニので悪いけど。

…………それから、さっきは言いすぎた。ごめんなさい」




これは、夢?


私が都合よく欲望を具現化した夢なのかな?




「…………いひゃい」


「何してんだよ。頬つねったら痛いに決まってるだろ」



痛いってことは、夢じゃないってこと?




「本当に、夢じゃないの?」


「夢じゃねぇよ。……っいて。ほら、俺も頬つねったら痛いもん」




むぎゅっと秋は自分の頬をつねってみせる。


力一杯やったんだろう。



秋のつねった頬が、微かに赤くなっている。






夢じゃ、ない。


秋は今、私の目の前にいる。


そして今、私には、仲直りのチャンスが与えられている。