転生公女はバルコニー菜園に勤しむ

「お呼びでしょうか」

 別館の最上階の客室を訪れたシャーリィは、窓際に座るアークロイドに向き直る。
 暑い夏が終わり、朝晩もだいぶ涼しくなってきた。木の葉はまだ色づいていないが、来月になれば黄色や紅色に変わっていくだろう。

「まあ、座ってくれ。ルース、茶の用意を」

 壁際で控えていたルースが動き、ティーポットからそれぞれのカップに茶を注ぐ。コトンとテーブルに置かれたお茶は綺麗な緑色だった。

「これは……?」
「東の国で栽培されている茶葉だ。健康にいいらしい」
「……いただきます」

 一口飲むと、爽やかな味がした。やや苦みもあるが、思ったより飲みやすい。まるで茶畑にいるような茶葉の香りが強い。

「飲みやすいですね」
「一緒に甘いものと食べるとよいと聞いた」
「なるほど、確かによさそうです。……それで、ご用件はなんでしょうか」

 空き時間を縫ってやってきたが、この後の予定もある。本題を促すと、アークロイドは窓の外を数秒見つめてからシャーリィに視線を戻す。

「魔木について、聞きたいことがある」

 声に真剣味が帯び、反射的にシャーリィは背筋を伸ばした。

「……わたくしがわかることでしたら」
「あまり構える必要はない。確認したいだけだ。……魔木の生息地では、周辺の栄養を根こそぎ奪われるのだったな? だったら魔木から隔離した場所を作れば、自家栽培が可能になるのではないか?」