転生公女はバルコニー菜園に勤しむ

「姫様、覚えていらっしゃいますか? ちょうど三年前の今日、姫様は一人きりでツアーを見事こなしたんですよ。大人にも負けず、ハキハキとした物言いで観光客の心をつかみ、トラブルにもきっちり対処しました」
「……よく覚えているわ」
「今日はそのデビュー戦の記念日です。大公夫妻はご公務で国外に出られているでしょう? ですから、たまには私たちで姫様を労おうと、こうして皆が集まったんです」

 こんなに大勢に囲まれるのはいつぶりだろう。新人の騎士たちがトランプを使った手品を見せたり、女性騎士たちが管楽器を持ち出して優雅な音色を奏でたりしている。

「さあ、食べてください! 姫様」
「あ、ありがとう……」

 こんもりと盛られたお皿を差し出され、シャーリィはおずおずと受け取る。フォークでつやつやの豚肉を突き刺し、口に頬張るとまだ温かった。
 他のお野菜は薄い肉に巻かれたりと手が込んでいる。しかも初めての味付けで、口に入れた瞬間、幸せに包まれた。

「姫様、デザートもお持ちしました」

 遠くに行っていたミュゼが、今度は一口サイズのケーキを盛ったお皿を持ってきた。

「ミュゼ……いつになく張り切っているわね」
「元気がない姫様に喜んでもらおうと思って、頑張りましたからね。少しは元気、出てきました?」

 瞳をきらきらと輝かせて言われ、シャーリィは言葉をなくした。

(皆が集まってくれたのって……私を励ますため……?)

 今まで仕事第一に生きてきた。困っている人がいたら手伝い、休日も返上して自分にできることをしてきた。
 それなのに、今は仕事に集中できていない。
 仕事の手順は体が覚えているから、無意識でもそれなりに動ける。笑顔もできている。だけど、気づけば、心ここにあらずの状態に戻るのだ。

(私はどうしちゃったんだろう……今までこんなこと、なかったのに)

 ふとしたとき、思い出されるのはアークロイドの姿。いつかは帰ってしまう、海の大国からの上客。情勢が落ち着いたのなら、滞在期間を残して帰国する可能性は高い。

「シャーリィ」