「あの土地は一度受け入れた人には寛容だが、信頼を得るまでが難関だからな。仕方ない。俺が口利きしよう。マリーント自治州に嫁いだ姉がいる」
シャーリィは文官と目を見合わせた。
数々の難題が次々に片付けられていく手腕は舌を巻くほどだ。なぜ彼はレファンヌ公国の国民ではないのかと頭を抱えてしまう。
そんな人材不足の悩みには気づいていないのか、アークロイドは顎に手を添えた。
「そして最大の問題は、輸出量が少ないことだ。輸入量に対して、圧倒的に勝負できる武器が少ない。それが貿易赤字の根本的な原因だろう。既存のものに頼るだけでなく、新製品を開発しろ。今あるものでも、他国が欲しいと思わせるような工夫が大事だ。そのセンスを磨くためにも、外国に赴く調査隊が必要だ。その土地で何が売れているのか、どうしてそれが売れているのかを徹底的に調べ上げろ」
凄腕の宰相のような指示が飛び、文官たちがすくみ上がっている。畏怖の念を集めながら、アークロイドは口角を上げた。
「あとは、女は度胸だ。弱小国だからといって相手の顔色を窺うだけではだめだ。自分の要望は必ず相手に伝え、何度でも粘り、勝ち取れ。大公妃は美姫と名高いのだから、雰囲気作りも忘れるな。相手を圧倒させるように側近が演出するんだ」
「……アークロイド様はすごいですね! こんなにも次々にアイデアが出てくるなんて、びっくりしました。どれも、とても参考になります」
手放しに褒める横で、文官たちが必死にメモに取っている音が止まらない。
その様子を眺めて、シャーリィは素朴な疑問を口にした。
「どうやったら、ここまで他国のことまで詳しくなれるのですか?」
「情報収集能力も皇位に必要な素質だからな。皇族たるもの、知っておくべきことは多いほうがよい。知識はいつ役に立つかわからないから、しっかり身に付けておけと、常々シリル兄上に言われてな……」
「そのお兄様は慧眼の持ち主ですね」
「ああ、そう思っている」
故郷を思い出しているのか、自然と笑みがこぼれた。先ほどまでの鋭い視線はなりをひそめて、目元が和らぐ。
その変化を見て、シャーリィはそっと視線を外した。
(なんだろ……)
胸がどきどきと波打つ。なぜだか、目が合わせられない。気まずさを払拭しようと、テーブルに置いてあった書類を手に取った。
数字や文字を目で追うが、その内容はまったく頭に入らなかった。
シャーリィは文官と目を見合わせた。
数々の難題が次々に片付けられていく手腕は舌を巻くほどだ。なぜ彼はレファンヌ公国の国民ではないのかと頭を抱えてしまう。
そんな人材不足の悩みには気づいていないのか、アークロイドは顎に手を添えた。
「そして最大の問題は、輸出量が少ないことだ。輸入量に対して、圧倒的に勝負できる武器が少ない。それが貿易赤字の根本的な原因だろう。既存のものに頼るだけでなく、新製品を開発しろ。今あるものでも、他国が欲しいと思わせるような工夫が大事だ。そのセンスを磨くためにも、外国に赴く調査隊が必要だ。その土地で何が売れているのか、どうしてそれが売れているのかを徹底的に調べ上げろ」
凄腕の宰相のような指示が飛び、文官たちがすくみ上がっている。畏怖の念を集めながら、アークロイドは口角を上げた。
「あとは、女は度胸だ。弱小国だからといって相手の顔色を窺うだけではだめだ。自分の要望は必ず相手に伝え、何度でも粘り、勝ち取れ。大公妃は美姫と名高いのだから、雰囲気作りも忘れるな。相手を圧倒させるように側近が演出するんだ」
「……アークロイド様はすごいですね! こんなにも次々にアイデアが出てくるなんて、びっくりしました。どれも、とても参考になります」
手放しに褒める横で、文官たちが必死にメモに取っている音が止まらない。
その様子を眺めて、シャーリィは素朴な疑問を口にした。
「どうやったら、ここまで他国のことまで詳しくなれるのですか?」
「情報収集能力も皇位に必要な素質だからな。皇族たるもの、知っておくべきことは多いほうがよい。知識はいつ役に立つかわからないから、しっかり身に付けておけと、常々シリル兄上に言われてな……」
「そのお兄様は慧眼の持ち主ですね」
「ああ、そう思っている」
故郷を思い出しているのか、自然と笑みがこぼれた。先ほどまでの鋭い視線はなりをひそめて、目元が和らぐ。
その変化を見て、シャーリィはそっと視線を外した。
(なんだろ……)
胸がどきどきと波打つ。なぜだか、目が合わせられない。気まずさを払拭しようと、テーブルに置いてあった書類を手に取った。
数字や文字を目で追うが、その内容はまったく頭に入らなかった。



