転生公女はバルコニー菜園に勤しむ

 芙蓉の間の入り口にて、シャーリィは待ち伏せをしていた。今は朝のバイキングの時間だ。宿泊客が次々に中に入っていく。
 ちらりと腕時計の針を確認する。

(ダリアから聞いた時間だと、そろそろお越しのはずだけど……)

 そわそわと待っていると、廊下の奥から藍色と赤髪の二人組が歩いてくるのが見えた。向こうもこちらに気づいたようで、足を止めた。

「おはようございます」
「ああ、おはよう。珍しいな、ここで会うとは」

 意外そうな顔をされ、シャーリィは居たたまれない心境になった。

「……アークロイド様、ご相談があるのですが」
「なんだ?」

 尋ねる声は静かで、どことなく心配そうに見られている気がする。しかし、ここまで来たら逃げ出すわけにいかない。
 覚悟を決めて、おずおずと口を開いた。

「その、あまりおおっぴらにできない話なのです。アークロイド様さえよければ、宮殿でお話しできないでしょうか」
「……それは構わないが。いつだ?」
「三日後の十時でいかがでしょうか」
「了解した」
「では、どうぞよろしくお願いいたします」

 失礼いたします、とお辞儀をし、そのままその場を去る。その背中を灰色の瞳が訝しむように見つめていたことには気づかなかった。