腕時計を見やる。あと三十秒で、十一の部分に長い針が合わさる。
シャーリィは薄く息を吐き、執務室のドアをノックした。
「シャーリィです。入ってもよろしいでしょうか?」
「――入りなさい」
低い声の許可が聞こえ、ドアノブを傾けて室内に入る。
大きな窓の前にあるデスクには紙のタワーが築いてあり、天井につくほどの高さの本棚が左右に並べられている。
一つしかないデスクからシャーリィを見つめるのは、レファンヌ公国、第三十七代大公クレメンスだ。亜麻色の髪はふわふわとうねり、やや垂れた目元には知的な輝きがある。
「緊急と伺いましたが、何かありましたか?」
「まあ、まずはお座りなさいな。お茶を用意させるわ」
クレメンスの横にいたビアンカ大公妃が手で促し、応接用のソファーを手で示す。二人がけのソファーに腰かけ、真正面にクレメンスとビアンカが並んで座る。
「家族でこうして集まるのは久しぶりですね」
「ああ、そうだな……ここ最近は政務も滞っていて忙しかったからな」
「シャーリィが元気そうで何よりだわ」
レファンヌ公国では大公が内政を、大公妃が外交を担当している。それと平行して、観光ツアーもこなさなければならないので、家族で集まる時間もゆっくり取れない。
ビアンカが緑の瞳を細め、書記官が運んできた紅茶を飲んでいる。その横に座るクレメンスは厄介な難事件を抱えているような渋い顔で言った。
「仕事の合間を縫ってきたから、お互い時間もないだろう。これから本題に移る。心して聞いてほしい」
「……はい」
「観光業は、シャーリィの頑張りもあって盛況だ。国同士の行き来も活発で、通行料の徴収も平年通りだ。……だが、しかし。ここで一つ問題がある」
シャーリィは薄く息を吐き、執務室のドアをノックした。
「シャーリィです。入ってもよろしいでしょうか?」
「――入りなさい」
低い声の許可が聞こえ、ドアノブを傾けて室内に入る。
大きな窓の前にあるデスクには紙のタワーが築いてあり、天井につくほどの高さの本棚が左右に並べられている。
一つしかないデスクからシャーリィを見つめるのは、レファンヌ公国、第三十七代大公クレメンスだ。亜麻色の髪はふわふわとうねり、やや垂れた目元には知的な輝きがある。
「緊急と伺いましたが、何かありましたか?」
「まあ、まずはお座りなさいな。お茶を用意させるわ」
クレメンスの横にいたビアンカ大公妃が手で促し、応接用のソファーを手で示す。二人がけのソファーに腰かけ、真正面にクレメンスとビアンカが並んで座る。
「家族でこうして集まるのは久しぶりですね」
「ああ、そうだな……ここ最近は政務も滞っていて忙しかったからな」
「シャーリィが元気そうで何よりだわ」
レファンヌ公国では大公が内政を、大公妃が外交を担当している。それと平行して、観光ツアーもこなさなければならないので、家族で集まる時間もゆっくり取れない。
ビアンカが緑の瞳を細め、書記官が運んできた紅茶を飲んでいる。その横に座るクレメンスは厄介な難事件を抱えているような渋い顔で言った。
「仕事の合間を縫ってきたから、お互い時間もないだろう。これから本題に移る。心して聞いてほしい」
「……はい」
「観光業は、シャーリィの頑張りもあって盛況だ。国同士の行き来も活発で、通行料の徴収も平年通りだ。……だが、しかし。ここで一つ問題がある」



