転生公女はバルコニー菜園に勤しむ

 一礼したオレールは緊張した面持ちだ。一方のアークロイドは慣れた様子で、軽く手を振ってあしらっている。

「俺は静養のため、訪れている。それに非公式の訪問なので、気づかなくても無理はない」

 まさか、第六皇子が従者を一人だけ連れて、のんびり温泉に浸かりに来たとは思わないだろう。もっと警備や側近の人数がいれば彼も気づけただろうが。
 オレールはそっと息をついて、言葉を続けた。

「そう言っていただけて安心いたしました。まさか皇子がいらっしゃるとは思っていなくて……それは館内用の服ですね。すっかり馴染んでいて、うらやましいです」
「うらやましい?」
「僕はどんなに通っても客としてしか接してもらえません。ですが、シャーリィ姫は皇子には心を許しているように見えます」

 そんな風に見えただろうか。二人とも、同じように接しているつもりのシャーリィには違いがわからない。
 アークロイドはシャーリィを一瞥し、少し目線を下げる。

「……俺は逆だと思うがな。オレールのほうが距離は近いのではないか? 少なくとも、俺は一緒に料理をする仲ではない」
「それもそうですね」

 同意したオレールがくすりと笑う。

「よければ、ご一緒してもよろしいでしょうか?」
「……ああ。トルヴァータの話を聞かせてくれると助かる」

 歩み寄る二人を邪魔しないよう、シャーリィはそっと退室した。