転生公女はバルコニー菜園に勤しむ

 食堂には通常の飲食用スペースと大勢で囲むソファー席がある。コの字型のソファーには左側にアークロイドが座ってくつろいでおり、その後ろにルースが立っていた。
 特筆したことは何もない、いつもの風景だ。

「アークロイド様、おやつにクッキーはいかがですか?」

 クッキーが盛り付けられた籠を持っていくと、アークロイドが読んでいた新聞から視線を上げる。

「シャーリィが作ったのか?」
「いいえ、オレール様と二人で作ったんです」
「……二人で?」

 訝しむような雰囲気を感じ、シャーリィは言葉足らずを自覚する。慌てて事の経緯をかいつまんで説明する。

「空いた時間があるからお菓子作りをしたいと言われまして。特別に一緒に作ったんです。オレール様は料理もよく作られるそうで、手際がいいんですよ」
「普通に作っただけですよ」

 厨房から戻ってきたオレールが苦笑いを浮かべている。

「そんなに謙遜しなくても……料理長も筋がいいって褒めていましたし。味だって申し分ないですし、やっぱり才能があるんですよ!」
「そうですか? でも、褒められると嬉しいです」

 無邪気に笑う様子を見て、シャーリィは内心拍手を送った。

(ああもう、まるで天使のような笑みだわ!)

 心が浄化されていくようだ。年上なのに、年下のようにしか見えない外見も相まって神聖化して見てしまう。
 天使はスカイブルーの瞳をきらめかせ、こてんと首を右に傾けた。

「料理が得意な男って、結婚相手としてどう思いますか?」
「とてもいいと思います! 優良物件ですよ。アークロイド様もそう思うでしょう?」
「……まぁ、な……」

 歯切れの悪い返事に首を傾げていると、オレールが前に進み出た。

「あの、アークロイド皇子殿下。先日はご挨拶できず、失礼いたしました」