アークロイドの強い勧めもあり、大事を取って早く就寝した翌朝。
いつもよりゆっくりした動きで朝の準備を終え、宮殿の門に向かう。一昨日の蒸し暑い夜と打って変わって、昨夜は窓から吹き込む夜風が涼しかった。
もういらないだろうと片付けていた毛布をリネン室から引っ張り出して、身体を丸めて寝たおかげで身体はぽかぽかだ。
「二人とも、おはよう」
「これは公女殿下。おはようございます」
「姫様? 少しお顔が赤いようですが……」
敬礼したフランツの横でミュゼが顔を曇らす。
シャーリィは自分の首筋に手をやり、少し高めの体温を確認する。けれど、苦笑いをしてごまかした。
「あー。ちょっと風邪っぽいかしらね。でも大丈夫、私の代わりもいないし!」
「確かに姫様の代わりはいませんが、無理はしちゃだめですよ」
「はーい」
心配そうに見つめるミュゼに手を振り、宮殿を後にする。温泉宿の前に着くと、ちょうど別館からアークロイドとルースが出てくるところだった。
「あ、アークロイド様。おはようございます」
「…………」
「どうされました?」
無言で顔を覆っているアークロイドの後ろで、ルースが主人の様子を窺っている。
(……寝癖でもついていたかな……)
横髪や後ろ髪を軽く触れてみるが、変に跳ねている箇所はない。じゃあ一体、何が問題だったのだろうかと頭をひねる。
しかし、考えている間に腕を取られて、そのまま別館のロビーに連れて行かれる。
「ちょっとここに座れ」
文句は受け付けない、とばかりに睨みを利かせて言われるので、シャーリィはおとなしく従った。一人用のソファーは別館仕様なので、高級革の感触がどうも慣れない。
所在なげに肘置きに置いていた手を膝に戻すと、アークロイドが片膝をついて目線を合わす。理知的な灰色の目が近づき、居たたまれなくなって視線を泳がすと、彼の冷たい手が額に触れた。
「……やっぱり熱がある。こんな状態でどこへ行くつもりだ?」
いつもよりゆっくりした動きで朝の準備を終え、宮殿の門に向かう。一昨日の蒸し暑い夜と打って変わって、昨夜は窓から吹き込む夜風が涼しかった。
もういらないだろうと片付けていた毛布をリネン室から引っ張り出して、身体を丸めて寝たおかげで身体はぽかぽかだ。
「二人とも、おはよう」
「これは公女殿下。おはようございます」
「姫様? 少しお顔が赤いようですが……」
敬礼したフランツの横でミュゼが顔を曇らす。
シャーリィは自分の首筋に手をやり、少し高めの体温を確認する。けれど、苦笑いをしてごまかした。
「あー。ちょっと風邪っぽいかしらね。でも大丈夫、私の代わりもいないし!」
「確かに姫様の代わりはいませんが、無理はしちゃだめですよ」
「はーい」
心配そうに見つめるミュゼに手を振り、宮殿を後にする。温泉宿の前に着くと、ちょうど別館からアークロイドとルースが出てくるところだった。
「あ、アークロイド様。おはようございます」
「…………」
「どうされました?」
無言で顔を覆っているアークロイドの後ろで、ルースが主人の様子を窺っている。
(……寝癖でもついていたかな……)
横髪や後ろ髪を軽く触れてみるが、変に跳ねている箇所はない。じゃあ一体、何が問題だったのだろうかと頭をひねる。
しかし、考えている間に腕を取られて、そのまま別館のロビーに連れて行かれる。
「ちょっとここに座れ」
文句は受け付けない、とばかりに睨みを利かせて言われるので、シャーリィはおとなしく従った。一人用のソファーは別館仕様なので、高級革の感触がどうも慣れない。
所在なげに肘置きに置いていた手を膝に戻すと、アークロイドが片膝をついて目線を合わす。理知的な灰色の目が近づき、居たたまれなくなって視線を泳がすと、彼の冷たい手が額に触れた。
「……やっぱり熱がある。こんな状態でどこへ行くつもりだ?」



